LEADER's VOICE
ハルメクの通販には「ハルメク 健康と暮らし」「ハルメク おしゃれ」という2つのカタログがあります。MDとカタログ編集者が一体となって商品開発や誌面展開を追求し、50歳以上のシニア女性に向けたさまざまなアイテムを紹介しています。
紹介商品の多くはPB(プライベートブランド)商品で、売上げの比率の約70%を占めています。PB商品は利益率の高さが注目されがちですが、実はその企業の姿勢が試される怖い商品でもあります。PB商品で失敗するということは、企業そのものにNOを突き付けられたも同然。それくらいの覚悟を持って、私たちは日々開発に取り組んでいます。
心がけているのは、歳を経て感じる身体の変化、生活の不便、健康の悩みを跳ね返し、使うことで若い頃のような活発さを取り戻すことができるような商品。言うのは簡単ですが、実現するのはかなりの難問です。シニア女性はこれまで長年買い物をしてきて目が肥えているうえ、今の自分に必要かどうかをシビアに見極める力があるからです。若者のように衝動買いはしてくれません。機能も使い心地も質感も、そしてコストパフォーマンスにも合格点が出る商品――作り手としては、なんとも挑み甲斐がある仕事です。
カタログ通販で商品を買いたくなるのは、それを使う時の自分をリアルに思い描けた時ではないでしょうか。例えば洋服を見て「これ素敵ね」と思う時、お客様はその洋服を着て出かけている時の「素敵な自分」をイメージしているのです。先日、とても印象的だったのは、カタログの見開きページで介護にも使える靴とデザイン性の高い靴を紹介した際に後者の方が何倍も売れたこと。どんなに機能的な商品でどれほど必要性が高いことを訴えても、気持ちが盛り上がるものでないと購買にはつながらないことを実感しました。
お客様の気持ちを揺さぶる商品を数多く揃えるのはもちろん、その商品を使うことで生活がどう変わるかというストーリーも提案していきたい。そのストーリーとは、女性が「シニア」という言葉にとらわれず、カラフルでビビットな人生を楽しむことを、商品を通じて実現できることを伝えたい。私たちはそう思っています。
シニア向け商品の開発には2つのニーズに応える必要があります。年齢による悩みなどの“普遍的なニーズ”と、今現在のトレンドや若いころに流行っていたモノやコト、文化などによって変わる“変化するニーズ”です。多くの企業がシニアビジネスで苦戦しているのは、ニーズをうまく拾うことがいかに難しいかを表しています。どんなに大規模なマーケティング調査も、「シニアといえば〇〇だろう」という先入観があれば、誘導された結果になってしまうのです。
ハルメクは出版社がベースになっていることもあり、取材力がある社員が多い。知らないことは躊躇なく聞き、新鮮な驚きを得て固定概念にとらわれない提案がどんどん出てきます。そこに商品開発出身の社員による知見が加わり、より実現可能性の高い形にブラッシュアップされます。また、ある社員は「ハルメクのお客様を“お母さん”だと思っている」と言いました。大切な家族に良いものを届けたいと思うから、とことん話を聞き、妥協せずアイデアを絞り出すと言うのです。スキルの裏にある熱い思い。それこそが私たちの強みです。
会員数と売上を順調に伸ばしているハルメクの通販事業ですが、これに胡坐をかくつもりはありません。今後チャレンジしたいことのひとつは、商品力の更なる強化。カタログ通販やEC、店舗に加え、これからは新聞広告などによる直販も増やしていきたいと思っています。“ハルメクワールド”に共感してくれた方に商品を届けるというこれまでのルートとはまったく逆の、商品を通してハルメクを知っていただくルートを作るということです。一目見た瞬間に「欲しい!」と思ってもらえるような商品をいかに作るか。また、新たな挑戦が始まります。
もうひとつは、通販そのものを一歩進めるということです。通販は、その長い歴史のなかで必要なものを買うという段階から、人生がより充実するものを買うという時代になっています。まさに私たちが実践している「ライフスタイル提案」です。そして、今はエンゲージメントの時代。つまり、“(ほかならぬ)あなただから”買うという段階になっているのです。これから、さらに通販・マーケティングの世界は進化していきます。それをハルメクはいち早く実現したいと考えています。
※この情報は2021年10月現在のものです
ものづくりにおいて大切なのは、使う人のことをどれだけ思い描けるかということです。一般にそれは“顧客志向”という言葉で表されることが多いのですが、“志向”ではとても足りない。とことんお客様に寄り添い、自分がお客様だったらどうだろうということを真剣に考え続けることができる。そうした他者に尽くそうとする思いの強い人とともに、新しいチャレンジをしていければと思っています。