ハルイロ(ブログ)

【後編】 なぜ、山岡朝子は雑誌「ハルメク」編集長になったのか? 明日から参考にできる、問題にぶつかった時の彼女らしい行動や考え方。

ハルメクグループの「今」と「未来」を伝えるオウンドメディア「ハルイロ」をご覧いただきありがとうございます。今回は、「ハルメク」の編集長、山岡朝子さんインタビューの後編。仕事術についてお聞きしています。

成果を上げるための重要なことを見極める

(編集部)編集長業務は多忙を極めているかと思いますが、どのように仕事をされているのですか? 私は仕事が終わらなくて……。
 
(山岡)実は、そんなに忙しいと思ったことはないのですが……とはいえ、担当する範囲が広いのは事実です。雑誌の編集だけでなく、新規事業であるウェブサービス「ハルメク365」、さらに広報活動の一環としてテレビに出たり講演したり、役員としてグループの経営にも参加しています。なので、時間の割き方に優先順位をつけることはかなり重視しています。重要度と緊急度の選択、でしょうか。目の前の案件や会議に頓着しすぎると、予定をこなすだけで一日が終わってしまいますから、成果を上げるための重要なことを見極めることが大切です。
 
私にとっての成果とは、第一に今のお客様に喜んでいただくこと、第二に、新たなお客様に知っていただくことです。また、各事業で仕事がスムーズに進むように環境を整えたり、会社全体の成長に貢献することも役割です。目の前の業務に追われず、何が自分のなすべきことなのか、そのために勉強したり考える時間をとることも含めて、時間の使い方は常に見直しています。
 
(編集部)最初からそのような考えで、仕事をされていたのですか?
 
(山岡)前職の時代から長く編集長を務めるうちに、経験を積んで変わってきた感じですね「今日1日、自分は十分な付加価値を生み出しただろうか」ってよく考えます。会議に次々と出て報告を聞いたり、資料を作ったり、原稿を熟読していれば、役割を果たしたような気になるけれど、それは本当に成果につながっているのか。人に任せられる部分は思い切って任せることも大事ですね。任された方はそれだけ経験が積めますし、私も他のことに時間を使えます。人に任せたほうが新しいアイデアが出てきて、より成果が上がる場合も多い。優秀な社員がたくさんいますから、日常の業務は信じて任せまくってます(笑)
 
(編集部)ハルメクに来る前も編集長をされていて、お忙しかったと思うのですが、その時期にMBA(経営学修士)を取得されていますよね。
 
(山岡)30代の頃で、むしろ今より忙しかったかもしれません。ハルメクと違って深夜残業が当たり前の職場でしたから、毎日、夜中まで働いていました。その状況で大学院に通ってMBAを取ろうと思うこと自体がどうかしている(笑)。でも、重要だと思ったんですね。この先、紙媒体のマーケットは縮小していくから、勘やセンスだけでは自分の大切な雑誌やスタッフを守れない。目の前の仕事に追われているだけじゃなくて、未来をつくるための勉強に時間を割かないとって。3年間、仕事の後に通って、大量の宿題と格闘しました。大変でしたが今振り返ると我ながら大正解でしたね。

自分で変えられるものに集中し、解決すべきことを分解

イベントの様子。舞台の上に山岡さん。

(編集部)仕事のストレスも多いと思うのですが、どのように解消されているんですか。
 
(山岡)ストレスはそれなりにあるのですが、まともにぶつからないように工夫しています。気持ちを切り替えるために毎日スターバックスのチャイティーラテを飲んでいますけど(笑)、それは表面的な解決法。本質的には、何か問題が起きたら、まずその問題を分解してみて、手に負えるサイズに分けてから重要な順に打ち手を考える。分解してみると対処を考えやすくなります。それでもダメそうだったら、最悪の場合はどうなるのかシナリオを想定してみる。大変なことになりそうだけど、まあ命まではとられないな、とか(笑)最悪のケースまで「想定内」に入れることで、迷いやストレスを減らせます。
 
(編集部)細かい分析をする冷静さと、「命まではとられない」と腹を決める胆力が同居されてますね(笑)
 
(山岡)自分が「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極めて、「変えられるもの」に集中することも心掛けています。例えば、いつも何か嫌なことを言ってくるような人がいたとして、その人の言動を変えようとしても無理。ストレスがたまるだけです。その人とどう付き合うか、たとえば言い返すのか、笑顔で接するのか、気にしないようにするのか、は自分で選べますよね。自分が変えられること、解決できることに気持ちを向けていれば、たいていのことはストレスを感じずに済みます。
 

愚痴るか、仕事をうまく進めるかは自分で選べる

前職時代の山岡さん

(山岡)20代の頃、上司から、その頃の私にはとても理不尽と感じることを言われて、当時の彼氏(今の夫)に愚痴っていたんです。彼は7歳年上で、社会人としてだいぶ先輩。その彼が「明日、出社したら一番に『昨日は私の考えが足りず、申し訳ありませんでした。今後も頑張りますのでよろしくお願いします』って言ってごらん」と言うんです。
 
当時は、「なんで私が謝るの!?」と思ったのですが、夫が「だって仕事を進めたいんでしょ。やってみな」と言うので翌日、その通りに謝ってみたんです。そうしたら上司がニコニコになって、いろいろ話もしてくれて、その後も何かとサポートしてくれて。びっくりすると同時に、コミュニケーションの大切さを学びました。
 
自分のものさしで正当性を主張したり、相手を論破することには意味がない。相手との立場の違いを認識して、リスペクトをもってコミュニケーションすることで、気分もいいし、一人ではできない成果も出せる。以後、私の働き方や生き方の基本になりました。
 
部下のメンバーもそうです。個性あふれる部下が数十人もいますから、接し方もそれぞれ。自分のものさしで「こうしろ、ああしろ」といっても反応は薄い(笑)。なんで言うとおりにやってくれないのかとストレスを溜めるより、私にないものを思いつく、私にできないことをやってくれる貴重な存在としてリスペクトしています。意見や視点の違いにこそ価値があり、それを生かすことでチーム全体の成果が上がると考えています。

美学がある人、それが山岡編集長

(編集部)実は、今回のインタビューの前に、山岡編集長と普段一緒に仕事をしている社員に、山岡さんについてお聞きしているんです。まず一人目は、雑誌販促課で働くまきさん。山岡さんにキャッチコピーを付けるとしたら「闘志や情熱を内に秘めた負けず嫌いさん」だそう。前職のとき、手がけた雑誌が休刊寸前まで追い込まれても、「まだやれることがあるんじゃないか」と、100社に手紙を書いてスポンサーのお願いをしたという話が勉強になったとおっしゃっていました。

ハルメクコンテンツマーケティング 雑誌販促課 まきさん

(山岡)20代の時の話ですね。懐かしい。休刊しそうになったのは、私が数字をわかっていなかったせいなんです。25歳で新雑誌を立ち上げて編集を任され、その後の2年間、順調に売れていたので、まさか赤字になっているとは思わず……3か月後に休刊にすると言われてショックを受けました。部数が増えて売上が上がっても、それ以上に人件費や制作費が増えていれば利益は出なくなる。また、人気が出れば競合誌が追いかけてくるから、競争のための販促費もかかる。そういうことが全然わかってなくて、ただ「面白い本を作って読者が喜んでくれればいい」と思っていた。悔しくて情けなくて、当時付き合っていた夫を呼び出して大泣きです。でもワンワン泣いているうちに、「いや、まだ全力を出していない、今からでもやれることをやろう!」って、勝手に立ち直りました(笑)
 
(編集部)それで、スポンサーを集めるために手紙を100社に送ろう、と?!?
 
(山岡)翌日、経理部に駆け込んで、採算表の見方を根掘り葉掘り聞きました。赤字を解消するには、定価を上げる、部数を増やす、コストを下げるなどいろいろなアプローチがありますが、どれも時間がかかるし効果が小さい。3か月で逆転の大ホームランを狙うなら広告収入しかないと理解したんです。それで100社くらいに手紙を送って、広告くださいと(笑)。後で知ったのですが、当時の商慣習では、広告代理店を通さずに直接スポンサーにお願いするのはルール違反だったんですって。後で営業部から怒られました(笑)。でも、それでとても多くの企業がスポンサーとして協力してくださって、みんなびっくり。休刊の話も吹き飛んで、その雑誌はその後10年以上続きました。天井を決めず、やれることをすべてやったあの経験は、人生の中で忘れらない、今の自分を作っている経験です。あと、数字を把握してコントロールする大切さも。
 
(編集部)それが、「闘志や情熱を内に秘めた負けず嫌いさん」を作ったんですね。もう一人、ハルメク生きかた上手研究所の所長・ゆきえさんは、「論理的であり、かつ人の情感を動かすことができる方。実はすごく緻密に計算されているんだけど、それを歌を詠むかのように語るから心地が良いんですよね」とおっしゃっていました。そして「美学がある、覚悟の美」とも。「美学」と聞いて、思い当たることはありますか?

ハルメク 生きかた上手研究所 ゆきえ所長

(山岡)美学なんて言われると照れくさいですが…1日の終わりとか人生の最後の時に、「あんなことしなければよかった」「言わなければよかった」「もっとこうすればよかった」と悔やむようなことはしない、というのが自分なりの行動基準です。人を貶めるとか、足を引っ張るとか、マウントをとったりとか、メンツをつぶしたりとか、不正な行為もしない。そして、人も会社も、良い面に目を向けたいということが基本にあります。良い面を見て素直に「それ、いいですね!」と伝えたい。批判されても「おお、勉強になります!」みたいな(笑)。無意識ですけど、それがゆきえさんには“美学”に見えるのかな?
あ、もちろん業務上の注意とか議論はしますよ。時には厳しく出るときもありますけど、それとは別の話です。
 
(編集部)良い面を見てもらえるのは、部下としても嬉しいですね。

「50代、60代になったらハルメク!」と思ってもらえるように

(山岡)一昨年、紙の雑誌とは別に、「ハルメク365」というウェブサービスを立ち上げました。雑誌と同様に、役に立って信頼できるコンテンツを、ネット上でも提供できるようにしたくて。紙の雑誌では実現できない、動画や音声、ライブ配信なども取り入れて、さまざまなチャレンジをしているところです。特に、雑誌より若い世代の方にも見ていただけているのがうれしいです。2024年は大きく育てたいですね。
 
長期的には、ハルメクグループをさらに素敵な会社にしたいです。「50代、60代になったらハルメク!」と思ってもらえるような、お客様のそばで当たり前に存在するくらいのレベルに引き上げたい。そのために、お役に立てるコンテンツ、サービス、商品をもっと増やしたいし質も上げたいです。
そして、働くみんなが誇りを持って、のびのびと能力を発揮でき、仕事を通して成長できる会社になればいいなと思います。
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2回にわたってお届けしてきた、雑誌「ハルメク」編集長・山岡朝子のインタビューはいかがでしたか? その情熱を、少しでもお伝えできていれば幸いです! 

ハルメクグループではさまざまな部署で採用強化中です。この記事を読んで、ご興味を持っていただけた方は、こちらを是非ご覧ください。

カメラマン/貴嗣 編集/聡子、ゆりか(ハルイロ) ライター/久美子 

ニュース一覧